2018年4月19日付けの日本経済新聞夕刊に【警備員研修短縮へ】という記事が載りました。

 

 警備業界は現在慢性的な人手不足に悩まされています。特にひどくなったのはこの2年くらいで、当社でもそれまでは1カ月に1名の応募が不通にありましたが、今では年間で1名あるかないかになりました。警備員の高齢化で退職する者の方が多く、おそらくどこの警備会社も隊員数が減ってきていると思います。

 

それでも、警備員の需要は非常に多く、特に交通誘導関係では年度末にはたくさんの注文が入ります。もちろん隊員数が確保されていれば応じることは容易いのですが、結局はお断りするしかありません。特に東京の方では2020年の東京五輪に向けて色々な施設や道路関係の建設が急ピッチに進んでおり、警備員の確保は建設会社においても重要な位置を占めるほどになっているようです。

 

そんな現状を重く見て警察庁は有識者検討会を開き警備員の研修を短縮する方向に検討するというのである。

この研修というのは、正しくは「警備員新任教育」といい、施設警備、交通警、貴重品運搬警備、身辺警備のそれぞれ1~4号警備に全て法律で定められている教育となります。

全く経験のない新人或いは警備員を経験はしているが直近3年以内に1年間以上やっていない方は新任教育として30時間の教育を課せられます。厳密にいうと、課せられるのは雇用する警備会社で、警備員は新任教育を受けなければ現場には行けないのです。

 

 

 その教育も2つに分かれていて基本教育15時間と、業務別教育15時間の30時間になっています。

基本の15時間は1~4号警備の全ての人が共通して受講し、残りの業務別15時間はそれぞれに業務に分かれて受講するのです。

 

 この15時間+15時間をどのように短縮するのかが重要だと思います。先述した直近3年以内に1年以上警備員をした「経験者」は

これが基本5時間+業務別5時間の10時間に短縮されることから、私としては新人が15時間(基本7.5時間+業務別7.5時間)とし、

経験者は8時間(基本3時間+業務別5時間)とするのが適当と思うのですが・・・。

 

 それと、何より新人の入社を拒むのは、その必要書類の多さです。

警備員は他人の生命身体財産を守る仕事の為に、被後見人、被保佐人、破産人は出来ないようになっています。この事を証明するのには

2つの公式書類が必要になります。1つは大阪法務局で発行している「登記されていない証明」です。そしてもう一つが本籍地の役所が発行する「身分証明書」です。この2つの書類を取るのが非常に面倒で、特に本籍地が遠方で身寄りがいない場合は、これを取得するの

が面倒で諦めてしまうことも多いです。

 

 このように、警備業法が出来たいきさつは生命身体財産を守る、警察に近い内容の仕事という「前提」でありますが、現状はそこまで

の権限も強制力もなく「誰にでも」出来る仕事なのですから、立法時の「理想と現実」の隔たりがさらに近年大きく開いているのではと

痛感しております。

 

 ただ、全ての必要書類の提出は実は警備員なる為の誓約書に載っている「警備員の欠格事由」に触れないかどうかの為の確認であるた

めに、この警備業法14条1項の誓約書の内容を変更する以外にないのがややこしいところです。

 

 それと、何より大事なのは請負金額の向上であります。

全国警備業協会指導の見積もり方法で試算すると大阪では平日1人当たり18000円が妥当な金額になるのですが、実際にはそこまでの金額

では契約できません。賃金のアップこそ、警備員個々人の質の向上、強いては全体のイメージアップにつながっていくものと考えます。

 

 自家警備と呼ばれる、建設業者が自ら雇った人員に警備をさせることが既に話題に出ています。そうなれば依頼に基づいて警備をする

警備業法からの縛りを一切受けない自社の誘導員という立場になり、教育はもちろん、今まで我々が行ってきた全ての警備業法上の手続

きが不要となります。

 

 ようするに、警備業の根底を覆すことになりかねないこの自家警備をなるべくなくすように我々の警備業界も努力しないとまさに死活

問題になりかねません。

 

本当に、厳しい時代になってきましたが、何とかいい方向に進んで欲しいと祈るほかありません。

 

追記 令和元年6月22日

先日警察庁のHPにパブリックコメント募集が掲載されました。

中身は主に教育時間の改正と雑踏警備の検定合格者配置の改正です。

教育時間は現在30時間となっている新任教育を20時間に、半年ごとに行う現任教育8時間を1年に10時間に改正しかいが

意見はないか?というものでした。私は新任の20時間は半端なので15時間(2日間で修了できる)、現任においても10時間は

結局のところ2日かかるので1年ごとに8時間でよいとの意見を提出しました。

 

今後、これらの意見をくみ取って公示され施行されるでしょう。

 

当社のこのHPのTOP画面に記載しているように警察庁は警備業法の一部を改正すると発表しました。

そしてその新法は令和元年8月30日公布と同時に施行なので注意が必要です。 2019.9.4